「コミュ力」って言葉はいったん忘れよう
# 「コミュ力」って言葉はいったん忘れよう
エンジニアを目指すみなさんなら一度は聞いたことがあるであろう「エンジニアにはコミュ力が重要」というお話。 リアルでもネット上でもよく聞く言葉ですが、これが特にエンジニア未経験の人たちにとっては非常に罠のような言葉でして、 今回はこの「コミュ力」という言葉は一度忘れましょうってことで、その理由を説明したいと思います。
# エンジニアにはコミュ障が多い
まず、IT業界でなぜことさらにコミュ力なるものが重要視されるようになったかというと、 そもそもエンジニアって古くは オタクの巣窟でコミュ障が多い というのが要因。
つまり目を見て話せなかったり、思い込みやこだわりが強すぎて人の指示を素直に聞けなかったりしたために、 「まともにコミュニケーション取れるやつはいねえのか!!」 ってことでコミュニケーションが取れる人材が求められるようになったという経緯(だと思ってますが違ったら指摘してください)。
なので、まずこの業界でいう「コミュ力のある人」というのは「コミュニケーション能力に長けている人」ではなく、 「普通にコミュニケーションが取れる人」 を指します。ここ大事です。
つまり、数値で例えるならエンジニアはコミュ力 -100 な人が多いから、 +1 以上の人を選びたい。 もちろん +100 でも構わない。 って話です。
コミュニケーションを取るうえで障害となりうるような、例えば耳の聞こえない方であっても、指示された業務をきちんとこなせれば問題がないわけです。 僕はこの「コミュ力 +1」を「コミュ力がある」と言っていいのか疑問ですし、実際コミュ力がマイナスな人であってもエンジニアやってたりするわけで、 コミュ力(会話上手なスキル)が必須か否かで言えば否だと思ってます。
では、エンジニアにはコミュ力が全く不要かというとそうではないです。
前述した通り、「指示に従えない」「話を聞かない」「我が強くて手に負えない」だとそもそも組織で働くことは不可能です。
# エンジニアに必要なコミュニケーションをするには技術の習得が必要
また、会社組織で働く以上はどんなに小さな組織であっても上司がいて、取引先があります。 営業や広報といった他の部署から改修の要望も上がってくるかもしれません。
人との情報のやりとりをするからにはやはり「コミュニケーション」は必要になってきます。
では、エンジニアに求められる「コミュニケーション能力」とは何なのか。
それは僕の主観ですが下記の3つだと思っています。(もっとあるだろうけど)
- 報連相ができる
- 課題や目標に対して技術的見地から解決方法を提案する
- 顧客や非技術者にわかりやすく説明する
1つめの報連相についてはよく聞くと思います。
- プロジェクトを進める上でトラブルやイレギュラーはつきものですが、それらが発生したときに決済者に素早く伝えるのが 「報告」
- リリース作業やメンテナンスなど、これから実施する作業や仕様変更などの決定事項を共有するのが 「連絡」
- 手が空いた時や開発に行き詰まった時など、この後どうしたら良いか識者に指示を求めるのが 「相談」
これは他の多くの業界でも重要視されるスキルですが、この報連相を最初から適切に行える人なんてそうそういないと思います。 もちろん社会人をやっていく上で必須のスキルなので、社会人経験を積んでいく中で最優先で習得して欲しいものではありますが、 変な上司に報連相すると相談してるのに「そういうのは先に相談してよ~」とか、すぐに報告してるのに「まずは自分で考えろ!」とか言われて適切な報連相の仕方がわからない人も多々いると思います。
今のIT業界、特にWeb系のところは報連相で怒られるようなことはあんまりないと思いますので業界に入ってから習得したら良いんじゃないでしょうか。
2つ目の解決方法の提案ですが、これをやるにはまず技術の習得が必須になってきます。 懸念点の洗い出しが甘いまま 「DB使えば同一の住所かどうかなんてすぐ分かりますよ!」 なんて言おうもんなら上司から大目玉を食らいますw
逆にできるかどうか、いつまでにできるか不安すぎて「技術的には可能です」みたいな曖昧な言い方をしても非技術者には全く伝わりません。
技術を磨き、IT経験を積んでいくと、自然と「これはやったことあるから3日でできるな」とかロジックや工数が頭に浮かぶようになってきます。
なので 「エンジニアがコミュ力を高めたいならまず技術力を高めろ」 というのが持論です。僕はリモートワーク歴が長くなってきてコミュ力が爆下がり中です。
そして3つ目、顧客や非技術者への説明なんですが 若手であれば客前に出る機会も多くないと思うんですけど、これも当然技術のことがわかってないと説明なんかできるわけないので、 「エンジニアがコミュ力を高めたいならまず技術力を高めろ」 でしかないですね。
ちなみにオタク特有の早口で技術のことをベラベラ喋ってしまうのはまだまだ技術力不足な証拠だと思ってます。
それって 「特定の技術に傾倒しすぎてプロジェクト全体を見渡せていないから、その技術についてのめり込むように話してしまっている」 という状況ではありませんか?
「この技術が最も活かせる場面はどこか」「要望に対してこの技術はオーバーテクノロジーだから簡単なものにしよう」「ユーザーの要望に沿うためにはこの方法が良いんじゃないか?」 といった様々な観点から技術選定ができるようになってこその技術力だと思っています。
相手と目線を合わせて説明するには高度なコミュニケーション能力が問われると思いますが、その能力を下支えするのはやはり プロフェッショナルとしての高度な技術力 なのだと僕は考えています。
# まずは技術を学ぶところから
「エンジニアにコミュ力は不要」 とまで言ってしまうとさすがに極論だとは思いますが、 「コミュ障なエンジニアは多い」というのは事実ですし、そんなコミュ障でも働けるのがエンジニアという職種の魅力の一つでもあります。
そんなコミュ障であっても、報連相ができ、課題を解決し、自分の担当領域についてきちんと説明できる 「コミュ力の高いコミュ障」 を目指すことはできると思いますし、 コミュ力を高めるためにはまず担当領域についてよく学び経験を積むことこそが重要だと僕は考えています。
それとは別に、一般的に想像しうる「人と仲良くなれるスキル」の意味のコミュ力ですが、これはもちろんあれば人間関係が円滑になりますが、 よほど人とのコミュニケーションを拒絶するようなタイプでもない限りは無くてもなんとかなります。
というわけで、「コミュ力」と一言で言っても色々あるし、特に業界未経験の人にとっては一般的に言われている「コミュ力」とは別物で、 混同してしまうと混乱の元なので「コミュ力」という言葉はいっそ忘れてしまった方が良いと思います。
エンジニアに必要なのはまずは 「業務を遂行するための技術」 だと覚えておきましょう。
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