# 失敗しない転職のために、IT業界を正しく知ろう!
僕達が働くIT業界は、ひとくくりに 【IT業界】 と呼ぶには非常に幅が広く、 業態や組織の規模によって働き方や求められる能力も大きく異なります。
しかしSNSやWebに存在するIT関連の記事では、それらの違いが区別されずに語られることも多く、 これからエンジニアを目指す未経験者を混乱させるだけでなく、経験者同士の言い争いの原因になったりもしています。
この記事では、混乱しがちなIT業界の分類を僕なりの視点でまとめてみましたので、何かの参考になればと思います。
TIP
あくまで僕の経験と主観に基づいた分類なので、偏っていたり間違っている部分があるかもしれませんのでご了承下さい。
# Web系 vs SIer?いやその分類はおかしい
まず業界の間違った分類から正していきましょう。
「SIerからWeb系に転職した話」みたいなブログエントリが一昔前に流行ったので、それを読んで勘違いしてる人もいるかもしれません。
SIerとは System Integrator(システムインテグレータ) の略で、 主に非IT企業や官公庁などから受託開発や保守業務などを請け負い、 その業務を各子会社や開発会社が請け負うといった業界構造を指します。
開発・保守を行うソフトウェアの中には Webシステム や Webアプリ などが含まれる場合もあります。
一方いわゆるWeb系とは、主にWebシステムやWebアプリ、Webサービスなど Webを利用したプログラムを開発・保守・運用する組織または案件 のことで、 SIerのWeb案件というのももちろんあります。
つまり、SIerは業態、Web系というのは案件の種類を指す言葉であり、軸の異なる話なのがわかると思います。
# ■業態軸で見たIT業界
SIerを始めとした、 働き方
業態
を軸とした見方をすると、IT業界は大まかに下記のような区分になります。
呼び名 | 主な取引先 | 業態 |
---|---|---|
SIer | 官公庁,非IT企業 | 他業界からIT業務を請け負い、協力会社へ案件を流す業態。狭義にはその元請け企業のみを指す。 |
中堅SIer | SIer | 上記のSIerが元請けのみを指す場合、SIerから案件を請け負う開発会社を指す。≒受託企業 |
受託開発企業 | SIer,非IT企業 | 中堅SIerと同義の場合もある。SIer案件で培ったノウハウで非IT企業から直案件も手がける。 |
自社開発・自社サービス | 非IT企業,toC | 自社でサービス開発・運営を行う企業。サービス内容によって取引先は様々。 |
社内SE・情シス | 自社(非IT企業) | 非IT企業内でのサポートセンターや開発、外注に関わる業務などIT業務全般を担う何でも屋さん。 |
SES | IT企業 | エンジニアを募集する企業に対してエンジニアを派遣する業態。 |
もう少し大きな括りで言うと、他社から依頼を請けて開発する 受託開発 と、自社で企画から開発までを行う 自社開発 に大別できます。
受託開発の場合、顧客の要望を要件に落とし込む能力や、複数の会社と連携を取ったりと言った能力が重視される傾向にあります。 よく言われる「IT業界ではコミュニケーション能力が重要」というのは主にこのことを指しています。 顧客と顔を合わせながら進めていく業務が多い都合上、「スーツ着用」「リモート不可」な環境も少なくないです。
自社開発の場合、顧客折衝や他社との連携はそれほど重視されません。なぜなら自社のサービスだから。 それより開発からリリースまでを少人数で迅速に行ったり、保守性や拡張性の高いコードを書く能力、 最新技術のキャッチアップなどに割かれる比重が比較的高めだったりします。
もちろん受託開発でも技術力は高いに越したことはないですし、自社開発でもコミュニケーション能力は必要です。 ですが、それぞれの業界で求められる能力が違う傾向にあることを理解しておくことで、自分が進むべき方向や伸ばすべき能力が見えてくると思います。
ちなみにSESは様々なIT企業へ出向することができるので、受託や自社サービス系など多様な文化を見るのには最適だと思います。
# ■案件軸で見たIT業界
「Web系」のように、案件を軸にして業界を見ると、下記のような分類があります。 他にも金融系やオープン系などといったのもありますが、僕の知らない業界なのと書ききれないので割愛します。
呼び名 | 主流な言語 | 説明 |
---|---|---|
業務系 | Java,PHPなど | 企業の業務をシステム化する案件。SIerや受託系の多くはこれ。 近年はWeb系言語で開発するのが主流。 |
Web系 | PHP,Ruby,Node.jsなど | WebアプリやWebサービスを開発・保守・運用する。 使用する言語が同じでも、一般的に業務系とは区別される。 |
Webサイト制作 | PHP | 主にコーポレートサイトやLPの制作。Wordpressがよく使われる。 広義にはWeb系だが、やってることは全然違うので注意が必要。 |
アプリ系 | Java,C#,Flutterなど | やってることはWeb系のアプリ版だと思われる。むしろWeb系の方が後発のはずだけど畑違いのため詳しくは知らない。 |
組込系 | C言語 | 家電やロボット、ドローンなどパソコン以外の機械に載せるソフト開発を行う。畑違いのため詳しくは知らない。 |
案件の規模によって選ばれる技術の傾向が変わります。 比較的規模の大きい案件では枯れた技術が採用されやすく、規模が小さい案件ほど最新のフレームワークやAWSなど、モダンな開発環境が選ばれやすいです。
これは規模が小さいほどチャレンジしやすいからという単純な理由なので理解しやすいと思います。 ナレッジが溜まった技術から大規模案件にも使われるようになっていくので、 今の時代だとAWSやGCPを活用した大規模案件ももちろん存在します。
混ぜるな危険
業界ごとに案件の傾向に偏りがあったりするために業態軸と案件軸を混同してしまったり、 使用するプログラミング言語が同じ故に案件ごとの仕事の進め方の違いを無視した議論になったりすることがある。
認識の齟齬は争いや混乱を招くため、それぞれの違いをしっかり認識して区別するようにしましょう。
# 自分に合った業態、分野はどれか?
ここまで話した中で、IT業界の中でもそれぞれ分野によって違いがあることが理解できたと思います。
ではこの中で、自分に合ったジャンルはどれか?
例えば僕の場合は、 新しい技術を学ぶのが好き
せっかちなのでスピード感のある開発がしたい
みんなで一つの大きなものを成し遂げるより、一人または少人数で価値あるものを作り出したい
といった志向があるので、「Web系の中小零細企業」が今は自分に合ってると感じてます。
給料いっぱい稼ぎたい、組織のチカラで大きな成果を挙げたいと言った人なら、SIer系の方が向いてるかもしれません。
IT業界のこうした細かな業態って、外からだとなかなか見えなかったりすると思いますが、 自分の志向と違う業種に行ってしまうと、思ってたのと違った!なんてことにもなるのでよく知っておくと良いと思います。